マルメルの中野です。
カレーといえば、何を思い浮かべますか?
CoCo壱番屋? 近所のあのお店? それとも実家で食べたカレー?
「カレーといえば◯◯」と、何かしら頭に浮かんだはずです。それがブランドです。ロゴでも、コーポレートカラーでも、理念でもなく、「思い浮かぶかどうか」。ブランドの正体は、突き詰めるとそれだけだとわたしは考えています。
ブランドを作りたい、という話を経営者の方からよく聞きます。でも「ブランドを作りたい」という言葉の裏にあるのって、たいていは「選んでもらいやすくなりたい」「覚えてもらいたい」という気持ちだと思うんですよね。だとすれば、ブランドを考えることは、「どうすれば思い浮かべてもらえるか」を考えることと、ほぼ同義です。
単体での想起は、かなりきつい
「カレーといえば?」で全国1位を狙いにいく。これはさすがに現実的ではありません。長年かけて積み上げてきた知名度と予算を持つ大企業がいるわけで、そこに真正面からぶつかっても勝ち目はない。
でも、ちょっと待ってください。
「高知のカレーといえば?」だったらどうでしょう。「高知の辛いカレーといえば?」まで絞ったら?
競争相手が一気に減りますよね。さらに絞れば絞るほど、「それ、うちじゃん」という領域が生まれてくる。
これ、実はSEOの考え方とほぼ同じです。「カレー」というキーワードで検索上位を取るのは至難の業ですが、「高知 カレー 辛い」という複合キーワードなら、ぐっと現実的になる。ブランドも同じで、単体の大きなキーワードで戦うより、自社の特性と地域や属性を掛け合わせた「複合での想起」を狙っていく方が、地域の中小企業には向いています。
地名でなくてもいいんです。「スタートアップ向けのデザイン会社といえば」「後継ぎ経営者が相談する会社といえば」——自社の強みや、関わってきた文脈を掛け合わせるだけで、想起される場所は作れます。
大事なのは、「自分たちは何と何を掛け合わせた存在なのか」を意識的に決めることです。
ブランドは、接触回数で育つ
想起してもらうには、まず覚えてもらわないといけません。そして覚えてもらうために必要なのは、シンプルに「接触回数」です。
何度も見て、何度も聞いて、繰り返しその名前に触れることで、記憶に刷り込まれていく。これはもう、人の記憶の仕組みとして仕方ないことです。
「じゃあテレビCMを打てってこと?」——そんなことはありません。接触回数を増やす手段は、ほかにもたくさんあります。
SNSでの継続的な発信、Webサイトへの流入、イベントや展示会への出展。そして、意外と見落とされがちなのが地域メディアへのアプローチです。
マルメルでも以前、地域では珍しい取り組みをしたときに、地元のテレビ局や新聞社にFAXとメールで案内を送ったことがあります。結果、4局ほどが取材に来てくれました。
地域のメディアにとって、地元の珍しい取り組みは記事や番組の題材になります。案内を送るだけで、取り上げてもらえる可能性がある。費用はほぼゼロです。
「うちみたいな小さい会社が…」と思っている方こそ、一度試してみてほしいなと思います。
ただし、接触の「質」には気をつけてほしい
接触回数を増やすことは大事なのですが、一つだけ注意しておきたいことがあります。
刷り込まれるのは、ポジティブな情報だけではないということです。
「高知のまるめるカレー、おいしかったよ」と聞けば、まるめるカレー×おいしいが記憶に入ります。でも逆に「まるめるカレー、なんか微妙だったな」という話を何度も聞いたとしたら——まるめるカレー×まずい、がそのお店のブランドとして刷り込まれてしまう。
接触回数を増やすほど、その印象が強化されていきます。良い方向にも、悪い方向にも。
だから「とにかく露出を増やせばいい」とはならなくて、自分たちがどんな印象と一緒に記憶されているか、を同時に気にしておく必要があります。口コミの内容、SNSでの反応、取材記事のトーン——これらがネガティブな方向に動いているなら、接触回数を増やす前に、まず体験の中身を見直す方が先です。
ブランドは、積み上げるものであると同時に、壊れやすいものでもあります。
ブランドが効くと、選ぶ理由を説明しなくていい
ブランドがうまく機能したとき、何が起きるのか。
まず、価格で比べられにくくなります。「他より安くしてほしい」という交渉は、複数の選択肢を並べて比較しているから起きるわけで、「ここに頼みたい」という気持ちが先にある人は、そもそも値引き交渉をあまりしてきません。
商談もスムーズになります。初対面でも「あ、知ってます」から始まる打ち合わせは、ゼロから信頼を作る必要がない。話が早いし、変な警戒心も生まれにくい。
そして、自分から売り込みに行かなくても、探されて見つかる状態になっていきます。「◯◯といえばあそこ」と記憶されていれば、誰かが必要としたタイミングで、自然と名前が上がってくるわけです。
大きなブランドを一気に作る必要はありません。まずは「◯◯といえばうちかも」と思ってもらえる人が、少しずつ増えていけばいい。複合キーワードで狙いを絞って、継続的に接触回数を積み上げていく。地道ですが、これが遠回りのようで一番確かな道だとわたしは考えています。
あなたの会社は、何と何を掛け合わせた存在ですか?