マルメルの中野です。
ECサイトを始めようと思ったとき、最初に何を考えますか?
「どんなデザインにしようか」「どんな機能が必要か」「予算はいくらにしよう」——おそらく、そんな順番で考えているのではないでしょうか。
その気持ちはすごくよくわかります。ただ、この順番のまま進めると、サイトができあがったころには、人を集めたり改善したりするためのお金が残っていない、ということになりがちです。マルメルには、ほかの会社でECサイトを作ったあとに「思うように売れない」「直したいけれど予算がない」と困って相談に来られる方がいます。そうしたお話で何度も聞いてきたパターンと、わたしがおすすめしている予算の分け方を、この記事で紹介します。
ECサイトに本当に必要なもの
まず前提として、「ECサイトの成功=魅力的なサイトを作ること」ではないとわたしは考えています。
もちろん、デザインや使いやすさは大事です。でも、それが成功の本質かというとそうじゃない。ECサイトが売上を生むようになるには、顧客の反応を見ながら何度も改善できる体制が必要なんですよね。
最初に作ったサイトが完璧、なんてことはほぼありません。「来てもらえるのか」「見てもらえるのか」「カートに入れてもらえるのか」「最後まで購入してもらえるのか」——その一つひとつに、実際の顧客データが必要です。数字を見て、仮説を立てて、変えてみる。この繰り返しが、ECサイトを育てていきます。
わたしもスタンプマルシェを運営する中で、これを痛感した経験があります。サイトをリリースした後にユーザーの声を集めてみると、「商品が探しづらい」「どこに何があるかわからない」という声が思いのほか多かったんです。それらを一つずつ改善していったところ、サイト内の回遊率が上がり、売上にもつながっていきました。最初の状態が「完成」ではなかった、ということです。
となると、最初に予算を使い切ってしまうのは致命的です。改善するための余力が残っていないと、データを眺めながら何もできない状態になります。
ここから、ご相談の中でよく聞く失敗のパターンを紹介します。
Aパターン:「300万円でしっかり作ります」
制作会社に相談すると、こういう提案が来ることがあります。
「予算はおいくらですか? 300万円ですね。では、しっかりしたECサイトを作りましょう」
一見、頼もしい。でもこれが一番危ないパターンだとわたしは思っています。
なぜかというと、「サイトを作る」こと自体が目的になってしまっているからです。サイトができた後に、どうやって人を集めるか。来た人にどう買ってもらうか。そこへの設計が、まるごと抜け落ちています。
きれいなサイトができあがって、SNSで告知して……でも誰も来ない、誰も買わない。予算も使い果たしているので改善もできない——こういう展開を、相談の現場でよく聞きます。
これがうまくいくのは「最初から爆発的な需要がある商品」や「すでに熱狂的なファンがいる状態」など、ごく一部のケースだけです。多くの場合、サイトが完成した瞬間が「いちばん売れない瞬間」でもあります。
Bパターン:「半分は広告費に回しましょう」
マーケティングに理解のある会社に相談すると、こういう提案があります。
「全額を制作費にするのはもったいない。制作費は半分にして、残り半分を広告費に使いましょう」
これは、Aパターンよりずっとマシです。「作って終わり」ではなく、集客まで見据えているのは正しい。ただ、一つだけ肝心な要素が抜けています。
広告運用では、クリック率や費用対効果を見ながら改善してくれることが多いです。でも、その改善はあくまで「広告そのもの」の話。商品ページの説明文を書き直す、購入までの導線を組み替える、価格や見せ方を変えてみる——こういったサイト自体の改善にかかる費用は、広告費とは別に必要になります。
訪問者は増えた。でも誰も買わない。原因は広告ではなくサイト側にある——ということは実際によくある話なんですよね。でも改善するための予算がなければ、データを眺めながら何もできない状態が続きます。お金も時間も使い果たして「なんか、うまくいかなかったね」で終わる、というのがBパターンの末路です。
Cパターン:予算は「3つ」に分けて持つ
では、どう考えればいいのか。
予算を「制作費」「広告費」「改善費」の3つに分ける。
これだけです。シンプルなんですが、最初からこの設計で動いている人は意外と少ないんですよね。
なぜ改善費が必要かというと、ほぼすべてのECサイトは「最初の状態が一番完成度が低い」からです。いい商品を持っていても、見せ方が悪ければ伝わらない。集客できても、購入導線がわかりにくければ売れない。最初のサイトはあくまで「仮説」で、顧客の反応を見てチューニングして、また見て、また直す——このサイクルを回すための予算が改善費です。商品ページのリライト、LP修正、写真の撮り直し、価格設定の見直しといった作業が、ここに含まれます。
そして、この3つのうち**最もお金をかけるべきでないのが「制作費」**だとわたしは考えています。
最初から作り込みすぎたサイトは、改善するたびに時間もコストもかかります。最初はシンプルでいい。動けばいい。まずは顧客に触れてもらうことが先です。
作ることはゴールじゃない
ECサイトは、「作って完成」ではありません。「作ってから始まる」です。
よくある失敗は、スタート前に全力を出し切ってしまうこと。マラソンの序盤でダッシュするようなものです。当然、後半に失速します。
制作費・広告費・改善費を最初から設計して持っておく。この3分割の発想だけで、だいぶ変わります。
ECサイトを始める前に、一度「改善するための予算、残してありますか?」と自分に問いかけてみてください。